法律的な側面から申し上げれば、残念ながら現状では業者に対して内部資料の情報公開を請求することは難しいようです。
まず、検査にもいくつかのステップがありますので、検査体制のプロセスからご説明します。
集合住宅の場合で話を進めますが、通常マンション本体の当初の所有者は施工業者(建設業者)です。事業主(普通は不動産業者=売主)と施工業者、場合によっては設計会社も加わり、事業主独自の設計標準に基づいて設計されているか検査します。各自治体に条例等があれば、その規制にも準拠しているか確認します。
次に、建設工事がスタートする段階では、ボーリング等の地盤検査や土壌汚染の検査から始まり、コンクリート試験や配筋検査(鉄筋の太さ・本数・間隔・かぶり厚など)をします。これが中間検査です。
いよいよ建物本体が完成すると、施工業者による社内検査が行われ、さらに、事業主による施主検査が行われます。その後、住宅金融公庫の適格物件であれば公庫の検査が入り、消防署や保健所も立入り検査を行い、防火面や衛生面でもチェックを行います。
そして、いよいよ内覧会となります。契約者が実際の建物を内見できる瞬間です。しかし、その範囲は共用部分およびご自身の専有部分のみで、他の住戸は内覧できません。
以上の後、建物の所有権が施工業者から事業主へ移転され、最後に事業主から契約者へ移転されます。
■一部の悪徳業者がマイナスイメージを形成する
ご相談内容からすると、施主検査内容を閲覧希望したが、断られたということとします。売主側からすると
「検査は社内規程に従って行われており、各検査項目のすべてに合格しているのだから安心です」
というのが言い分でしょう。住宅性能表示制度を取り入れるマンションも増えてきており、同評価を導入すると「設計段階」と「竣工段階」で公的な評価機関による検査がなされますので、安心感は高まります。しかし、過信できない点も多々あります。コンクリートの流し込みを例にとれば、施工業者(いわゆるゼネコン)は立場としては総合プロデューサーであり、ゼネコンが自社でコンクリートの流し込みをすることは稀です。下請けのコンクリート業者に発注して行うからで、本来ゼネコンは下請け業者を監理することがその役目です。
ところが、コンクリート業者自体が故意か過失かは別として、結果的に手抜き工事となってしまった際に、同業者が事実を隠ぺいしてしまったり、また、ゼネコンの現場監督が欠陥に気付かなかった場合、検査は合格となってしまいます。こうした点が欠陥住宅の温床となるのです。
「欠陥マンション」の特番などでリフォーム時に躯体(基本構造部分)を見てみると、コンクリートに空き缶や布袋が埋め込まれていたり、かぶり厚が明らかに規定値に達していない映像が紹介されます。「もし、自分の購入したマンションがそうだったら・・・」と想像するとぞっとします。「設計当初の図面と完成後の図面は一致しない」ことが、あたかも当然のごとく報道されること自体、そら恐ろしい限りです。
すべての業者がこうした手抜きをしている訳ではなく、割合としては少ないのでしょうが、こうした一部の悪徳業者のおかげで業界全体が“悪者扱い”されていることは否定できません。
■消費者が望むのは「安心感」そのもの
我々、一般消費者は専門家ではありませんので、仮に竣工検査結果が公開され、その内容を閲覧することができても、正確にデーを読み解くことはできません。しかし、重要なのは情報を隠さずに公開すること、そのもので
「どうぞ!心行くまでご覧下さい。我々(施行業者)は、後ろめたいことは一切ありません」
と、胸を張って言い切ってくれることが安心につながるのです。情報を隠そうとすれば誰もが「怪しい」と感じます。「怪しい」と不信感を抱いてしまうと、今後は「欠陥住宅ではないのか?」と悪い想像をめぐらし、ついには不安感へと結びついていきます。こうした負のスパイラルが形成されてしまうと、よっぽどのことがない限り、契約に至ることはないでしょう。
マーケットの縮小により、ゼネコン業界はメインバンクからの債務免除によって細々と生き延びています。それだけに、消費者を向いた経営姿勢を取り戻さないと、市場からの後退を余儀なくされるでしょう。早急な構造改革が求められているのです。