不動産経済研究所が3月の首都圏マンション市場動向を発表しました。それによると、新規発売戸数は前年同月比35.8%減の2142戸となり、7カ月連続の減少となりました。契約率は70.0%と、同2.2ポイントのダウン。3月の販売在庫数は7888戸となり、新規発売戸数(2142戸)の約3.6倍の戸数が未契約のままストックされています。
その理由について、同社は「新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛要請の影響が出始めた」と分析しています。4月7日に7都府県に緊急事態宣言が発令され、さらに16日には対象地域が全国に拡大されました。こうしたことから、「翌月(4月)の発売戸数は1000戸前後と大きく落ち込む」と同社は予想します。
関西圏の新築マンション市場も軟調を余儀なくされています。2019年度の年間発売戸数は前年度比13.1%減の1万7452戸(不動産経済研究所)となりました。中古マンションも多分に漏れず、大規模な金融緩和が始まった2013年以降、 中古マンション価格は上昇基調にありましたが、 取引の減少や成約価格の頭打ちで弱含みの傾向が目立ってきました。
投資需要も含む中古マンション取引は景気の感応度が高く、近畿圏不動産流通機構は「19年10月の消費増税以降、すでに市況減速の動きが見られたが、 年明け以降、 新型コロナウイルス感染拡大の影響が不動産取引にも広がる可能性が指摘され、 中古住宅市場の先行き不透明感が強まっている」と総括します。
清水建設の50代作業員が新型コロナ感染で死亡する
帝国データバンクが10業界の全国2万3676社(有効回答数は1万1330社)を対象に行った「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年3月)によると、不動産業の82.0%、建設業の73.8%が自社の業績について「マイナスの影響がある」と回答しています(文末参照)。
その建設業では業界王手の清水建設で、東京都内の作業所に勤務していた50歳代の男性が新型コロナウイルスに感染して死亡しました。事態を重く見た同社は緊急事態宣言の対象地域に所在する当社作業所について、下述のように緊急事態宣言が終了するまでの間、閉所する方針を示しました。
新型コロナウイルス感染拡大を受けた当社の対応について(4月13日)
当社ではこれまで,作業所においては関係省庁の指導に則り,除菌消毒と「三つの密」回避の徹底を図り、また内勤においてもテレワークや出張自粛など、全社を挙げて感染予防と感染拡大防止策を推進してまいりました。さらに4月7日の「緊急事態宣言」発令を受け、一層の内勤の出社人員数削減など、人と人との接触を極力減らす施策に全力で取り組んでおります。
しかしながら、この度、当社の東京都内の同一作業所勤務者3名に発熱があり、新型コロナウイルス(PCR)検査を受けた結果、陽性と判明しました。なお、3名のうち1名は検査後も体調不良が続き、自宅待機していたところ、容態が急変して亡くなりました。その後、陽性と判明したものです。現在、保健所の確認を得ながら適切に対応を進めております。
当社は、首都圏をはじめ都市部を中心に日々深刻度が増す感染状況を踏まえ、当社グループおよび協力会社社員の生命・安全を最優先事項と考え、また、この感染症の拡大阻止の一層の強化を図るため、緊急事態宣言の対象地域に所在する当社作業所については、原則として緊急事態宣言終了までの間、閉所する方針といたしました。関係者の皆様とは今後、協議を進めてまいります。何卒、ご理解とご協力のほど、お願い申し上げます。
(清水建設のホームページより転載)
その余波は他のゼネコンにも伝播し、西松建設は7都府県での工事を5月6日まで基本的に中止すると公表しています。鹿島や大林組も緊急事態宣言の対象区域拡大を受け、全国の建設現場の工事を原則中止すると発表しました。さらに、大成建設は5月10日まで全国の工事を可能な限り中止すると公表しています。見えない恐怖がゼネコン業界を揺さぶります。
マイナスの影響があると見込む企業(業界別)
- 運輸・倉庫……84.5%
- 小売り…………84.2%
- 卸売り…………83.8%
- 不動産…………82.0%
- 農林水産………81.5%
- 製造……………80.5%
- サービス………78.6%
- 金融……………76.2%
- 建設……………73.8%