住宅購入のインセンティブとなった住宅ローン減税

マイホームの取得を検討している人にとって、「立地」「価格」「間取り」と並んで購入決定を左右する重要な判断材料となっているのが「住宅ローン減税」です。

昨年、住宅ローン減税の魅力はさらに高まりました。消費税率10%が適用される住宅を取得し、2020年12月31日までの間に居住の用に供した場合、控除期間が3年延長され、最長13年間にわたって控除されるようになりました。一般住宅の場合、最大で400万円を超える税還付が期待できるのです。年末ローン残高の1%が所得税から控除(控除しきれない場合は翌年の住民税からも)される、実に魅力的な減税制度です。

そのせいか、国土交通省の「住宅市場動向調査(2019年度)」によると、還付金を見込んでマイホーム購入を決断している様子が確認できました。住宅ローン減税の適用を受けている割合(受ける予定を含む)は、最も少ない中古一戸建て住宅でも約58%です。注文住宅では9割近くに達していました。もはや住宅購入のインセンティブとして、なくてはならない存在になっています。

住宅ローン減税の適用を受けている割合
  • 注文建築による新築住宅…………89.2%
  • 新築一戸建ての建て売り住宅……84.6%
  • 新築の分譲マンション……………87.3%
  • 中古一戸建ての分譲住宅…………58.4%
  • 中古の分譲マンション……………71.2%

ただ、難点として、減税の恩恵を受けるには自ら確定申告しなければなりません。市役所や税務署から案内は届きません。制度を知らずに還付申告しなければ、税金は一銭も戻って来ないのです。

そのうえ、すべての適用条件を満たして初めて税還付されます。1つでも条件を満たせなくなると、たとえ控除を受け始めていても、途中で還付はストップします。とりわけ注意が必要なのが「適用を受ける年分の合計所得金額が3000万円以下であること」と「適用を受ける各年の12月31日まで引き続き住んでいること」という2つの適用条件です。

どちらも“毎年”クリアしなければならないのです。もし、クリアできないと、その年は控除が受けられなくなります。住宅ローン減税を“満額”受け取るには、その仕組みを正確に理解しておく必要があるのです。

時間的な余裕ができたら来署して確定申告 受付期限は区切らない

そうしたなか、新型コロナウイルスが感染拡大しました。そこで、住宅ローン減税の手続きに支障が生じた人を救済すべく、一定条件(後述)のもと、手続きを弾力運用する特例措置が講じられました。具体的には、(1)確定申告期限の柔軟な取り扱い、(2)入居期限要件の弾力化 ―― の2点です。以下、1つずつ見ていきましょう。

確定申告期限を柔軟に取り扱います(国税庁)

昨今の新型コロナウイルスによる各地での感染の拡大状況を鑑み、さらに確定申告会場の混雑緩和を徹底する観点から、感染拡大により外出を控えるなど、期限内(2020年4月16日まで)に申告することが困難な人については、期限を区切らず4月17日(金)以降であっても柔軟に確定申告書を受け付けることといたしました。

申告書の作成または来署が可能になった時点で税務署へ申し出ていただければ、申告期限延長の取り扱いをさせていただきます。

上記は、国税庁から発せられた「確定申告期限の柔軟な取り扱い」についての案内です。新型コロナウイルスの影響により、やむを得ず住宅ローン減税の確定申告が本来の期限までに出来なかったとしても、期限を区切らず、その後も引き続き受け付ける旨が記載されています。準備ができた時点で来署・申告書類を提出すれば、何のペナルティーもなく住宅ローン減税が受けられるようになっています。

【関連サイト】確定申告期限の柔軟な取り扱いについて (国税庁)

条件を満たせば、入居期限を2021年末まで1年間延長できる

東京五輪と同様、入居期限が1年間延長された

続いて、2つ目が入居期限要件の弾力化です。上段で、住宅ローン減税はすべての適用条件を満たして初めて税還付されると説明しました。消費税率10%が課された住宅を取得し、控除期間13年間の住宅ローン減税の適用を受けようとすると、2020年12月31日までに入居する必要があります。

ところが、新型コロナウイルスの影響により、今年12月末までに入居できなかったとしても、次の各要件をすべて満たせば、特例として期限内に入居したのと同様の減税措置が受けられるようになります。つまり、本則通り控除期間13年間の住宅ローン減税が適用されます。

《注文建築により住宅を新築した場合》
  • 2020年9月30日までに工事請負契約が締結されていること
  • 2021年12月31日までに入居すること
  • 入居の遅延理由が新型コロナウイルス感染症、および、その蔓延(まんえん)防止のための措置による影響であること
《新築または中古住宅の購入、あるいは増改築した場合》
  • 2020年11月30日までに売買契約あるいはリフォーム工事契約が締結されていること
  • 2021年12月31日までに入居すること
  • 入居の遅延理由が新型コロナウイルス感染症、および、その蔓延(まんえん)防止のための措置による影響であること

新築住宅と中古住宅には分譲マンションも含まれ、また、ここでいう中古住宅はリノベーション業者などを売り主とする「買取再販住宅」とします。消費税率10%が課税された中古住宅である必要があるのです。個人間売買による消費税が課されない中古住宅には適用されません。

《必要書類》※注文・新築・中古・リフォームすべてに共通

こうした特例措置の適用を受けるには、新型コロナウイルス感染症、および、その蔓延防止のための措置の影響により、入居期限要件を満たすことができなかった事実を証明するための書類が必要になります。と同時に、入居期限要件を満たすことができなかった住宅の取得にかかる事実を証明すべく、契約書の写しなども添付する必要があります。

国土交通省が作成した証明書類の【様式】と【記載例】を以下に提示します。

【関連サイト】新型コロナウイルスの影響を踏まえた住宅取得支援策(国土交通省)

なお、入居期限要件が弾力化により1年延長されたにもかかわらず、それでも要件を満たせなかった場合、控除期間は3年短縮され、本則である控除期間10年の住宅ローン減税に戻ります。決して、住宅ローン減税そのものが不適合になるわけではありません。年末ローン残高の1%が所得税(一部、翌年の住民税)から10年間控除されます。

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もはや住宅購入のインセンティブとして、なくてはならない存在となった「住宅ローン減税」―― 特例措置を上手に活用すれば、控除期間13年間の税額還付が受けられます。新型コロナウイルスに負けてはいけません。お心当たりのある人は本コラムを参考に、少しずつ確定申告の準備を始めてください。